どうしても「真実ではない事を周りの人間の都合で真実に仕立て上げられる」や「認識の行き違いを指摘せずに飲み込まなければいけない」という場面は出てきてしまうもので、正直な所、誰かが割りを食っているのならばそれは構造にバグがあるので、僕は見て見ぬフリして放置するべきではないと思うが、放置しないにしても議論や検証は必要であるため、課題解決の筋道が立ち、それぞれの立場の人間が実際の行動に慣れるまでは「移行期間」として我慢を強いられる事もある。

全ての人間の能力が等しいわけではないし、認知や常識が共通な訳でもないので、一足飛びになんとかなるということは非常に稀である。というか、一足飛びになんとかなっている時は、単にダークサイドが表面化していないだけで、誰かが密かに犠牲になっている。自分の思い通りになっている時ほど、誰かを踏んでいないか、ケアしそびれていないかを入念に確認する必要がある。でなければ絶頂の時に背後から一撃必殺だ。下手したらジョジョ第5部のラスボス「ディアボロ」よろしく死なせてすらもらえない。踏めば踏むほど後からえげつない取り立てが始まるので、ツイてると思った時ほど姿勢を正す事を怠ってはいけないと思う。都合の良い事はそんなに都合良く起こらない。

良い事が起こった時には、なぜそれが起こったか(誰が譲ってくれたのか)を考えた方が良いし、悪い事が起こった時には、身を振り返って改善すべき課題があるというお知らせを受けたのだと思うと、アンラッキーの中に生きていても健康的に生きられると思うし、ラッキーな事が増えていくと思う。

そしてそういう意味では、「どんなにゴミみたいな事をしてきた相手でも、改心したなら根気よく見守る」事も大切だと思う。もちろん相手が課題解決を先延ばしして咎を踏み倒そうとしているならば論外なのだが、例えば過失や障害によって起きた事故の場合、自分も同じ過ちを犯さないとは限らない。人間は一度狂えばどこまでも狂えてしまう生き物だ。その行動原理が利己的なものであれ利他的なものであれ、行くところまで行ってしまえば他人の力を借りない限り修正が効かない事もある。しかし、他人の力を借りなければいけなくなった際、今までの素行が悪いと協力者は現れない事もある。そうなると、やらかしたニンゲンは何があっても独りでサバイブしなければならない。人間社会に席を置いている以上は無理ゲーである。

気づかない人はいつまで経っても自力では気づかないものなので、己の健康のためにも怒りを表に出す事は我慢しなくて良いと思うが、怒りは美しく昇華してこそ己を高める力になる。自分の思い通りにならないからといって不機嫌や恐怖で人をコントロールしようとしたり、ただ無作為に暴れ散らすのでは、次の生贄に立候補するようなものだ。もっと自分を大切にした方が良い。道徳心が壊れているニンゲンをお掃除するのにわざわざ自分の命をくれてやる必要はない。命は等しく尊いものではあるけれど、相手を完膚なきまでには潰さないという選択をした点においては、あなたの方が道徳的にはより尊い命なのだから。あらやだ、捉え方によってはちょっとお口が悪いかもしれない。ごめんあそばせ。

楽しく自由に人間である事を満喫するには、「独りで生まれ、独りで生き、独りで死ぬ」を目標に、ありとあらゆる人間と協力して生きる事を心がけるのが良いのではないかなと、最近は思っている。人間を愛すると言う事は、「相手が一人でも生きていけるように、今まで付けられてきたであろう傷を、自分にできる範囲で埋めてあげる」という事で、傷を埋めた先で引き続き手を取り合える関係が、「愛し合う」や「想い合う」という事なのではないかと思う。